わけ
表示
わげ も参照。
日本語
[編集]名詞:訳
[編集]わけ【訳】
- 物事の道理や筋道。
- 言葉などの意味や内容。
- 物事の理由や事情。
- 一般に物事の理由や事情。また、どうしてそうなったかの経緯。
- 同じような言い伝えを、ただ沢山に並べて見ただけでは、面白い読みものにはなりにくい上に、わけをきかれた場合にそれに答える用意が、私にはまだととのわぬからであります。 (柳田国男 『日本の伝説』)
- 万年寺を逃げ出したのには、深いわけがあったのではない。話にきく江戸の繁昌を見たかっただけのことだった 。(久生十蘭 『顎十郎捕物帳 捨公方』)
- 袴着の祝いの当日、あの件をやれと命じておいた、にもかかわらずなにごとも起こらない、(略)どういうわけだ、道円、これはどういうわけなのだ(山本周五郎 『樅ノ木は残った 第三部』)
- どういうわけか、約一週間前から過去の記憶が、全然ないのであった。(海野十三 『英本土上陸戦の前夜』)
- 崩れかけた石垣を逼ひ登つて、石垣の上に立ち、兩腕を高くさしのべて、たゞわけもなく涙することもあつた。 (櫻間中庸 『城山のことなど』)
- 特筆すべき、もしくは公にすることが憚られるような理由や事情。
- 一般に物事の理由や事情。また、どうしてそうなったかの経緯。
- (しばしば「わけがない」「わけのない」など直後に否定を伴って) 困難、手間、障害。
- (古用法) 男女の情事。またその顛末。
- (古用法) 遊里でのしきたり[ja 1]。
- (主に「用言連体形+わけだ」「体言+の/なわけだ」または「用言終止形+というわけだ」「体言+というわけだ」のかたちで、助動詞的に用いる)
- 摘示したことがらについて、同一の内容を言葉を変えて表現することで説明を補強したり全体をまとめたりする。また、内容を確認したり相手の確認を是認したりする。話者独自の視点や見解が入り込むこともある。
- 代入すると2の3乗かける5となります。つまり40というわけです。
- 道路が整備され宅地開発が進み小売店も増えた。町は発展しているわけだ。
- 「連勝複式は4-6か」「ほら、おれが買った馬券。4-6」「え、当たったわけ?」「そういうわけ」
- 「明日は午前の便に乗るから」「お昼前に着くわけね。わかった」
- 三人の父親から相当な金額が、当り屋(=三人が食い逃げをしたうどん屋の名前)に支払われた。つまり示談金というわけだね。そのおかげで、三人の生徒は処分を免かれた。(梅崎春生 『狂い凧』)
- 「そこもとは、たしか」/「伊東七十郎だ、まさか、知らなかったんじゃないだろうな」/「たしか小野どのの」/「さよう、桃生郡小野の館主、伊東新左衛門の義理の弟だ、正確にいえば新左衛門の妻がおれの姉というわけさ、わかったかね」(山本周五郎 『樅ノ木は残った 第三部』)
- 「(略)他人の希望に順応したり、掣肘されて生きるようなことは、私にはできない」/「つまり好き勝手なことがしたい、というわけか」/「つめて云えば、そうだ」(山本周五郎 『樅ノ木は残った 第三部』)
- 摘示した事実を根拠として、こうなるはずだという強い推測を表す。また、必然的に導かれることを示す。
- 見た目はのほほんとしているが、こいつの裏には恐ろしい話が潜んでいるのか……だからこいつはその謎を解くための、罪を裁くための手がかりというわけだな。 (アーサー・コナン・ドイル作、大久保ゆう訳 『蒼炎石』[ja注 2])
- その分析力が試されるほど世間で話題の問題と言えばただひとつ、ウェセックス賞杯の本命たる名馬の奇怪なる疾走と、その調教師の惨殺事件である。したがって友が突然、一大事件の現場へ趣く意図を告げたのも、私の予想と期待のうちだったというわけだ。 (アーサー・コナン・ドイル作、三上於菟吉訳、大久保ゆう改訳 『シルヴァブレイズ』[ja注 2])
- 「今拝見しましたところによると、やはり、爆弾の小破片が、脳髄の一部へ喰い込んでいるようですな」/「じゃあ、手術をして、その小破片を取出せばいいわけですね」(海野十三 『英本土上陸戦の前夜』)
- ところが、その日はぞろぞろと、幾百人とも知れない人の数が、後から後から続いてくるには、随分沢山の水が入用のわけだ。 (佐藤垢石 『老狸伝』)
- 馬にのってりゃ、それだけらくなわけだ。うちのむすこは、馬にものせてもらえず、足をぼうのようにすりへらして、あげくのはて、戦死したんだぞ。 (新美南吉 『丘の銅像』)
- 路面が濡れているということは、雨が降ったわけだな。
- ユニホームを着た選手たちが走ってるのが見える。たぶん駅伝か何かやってるわけだ。
- 物事が明らかになった時、それを当然帰結すべきものであったと考え納得するさまを表す。
- 「わけだ」を含む述部に力点がある表現。
- 「だから」「それで」などに力点がある表現。
- 仮定したことがらをもとにすれば、こうなるはずだという強い推測を表す。
- 事実を摘示して話し相手を説得させ、話を展開させようとする意志を表す。
- (口語, 疑問を呈する文の文末などで, 「わけ」で文が終止する場合は上昇調のイントネーションを伴う場合がある) 相手の態度や相手が思案していることを、問いただすさまを表す。
- 摘示したことがらについて、同一の内容を言葉を変えて表現することで説明を補強したり全体をまとめたりする。また、内容を確認したり相手の確認を是認したりする。話者独自の視点や見解が入り込むこともある。
- (しばしば婉曲表現, 主に「わけではない」「というわけではない」などの否定的な文中で)
- 事実を摘示して説得しようとする意志を表す。
- 前言の一部に含まれる誤解されうる箇所を受け、付加的に否定することを表す。また、聞き手が抱く予想や推論に対する否定を表す。
- 述語以外の文要素を否定することを表す。
- (二重否定の形で) その事実を部分的に肯定することを表す。
- (主に「わけがない」などの否定的な文中で, 口語では「わけない」) 強く否定する意味を表す。
- (「わけにはいかない」「わけにいかない」などの形で) できない。行うことが許されない。筋が通らない。
語源
[編集]発音
[編集]用法
[編集]- 語義1〜4は訳と紛れることから、仮名書きされる場合もある。また、語義7〜10は形式名詞的に用いられるため、仮名書きされる場合が多い。
- 語義3については「理由」という漢字を当てて表記する場合もある。
- その理由を教えてくれ。
- 昭和初期まで、特に語義7〜10の意味では、「訳」と区別するために「訣」の字が用いられた。
- 語義7-6の用法では、相手に対する否定や批判の意を包含する場合が多い。多くの場合「の」よりも意味が強い。
- 語義8は婉曲的な意味合いをしばしば持つが、「決して」といった語とともに用いて強調することが可能。無論、「わけ」を用いないほうが直球で明快な表現となる。
- 俺は決してお前を騙したわけではない。
類義語
[編集]- (語義1) 情理、道筋、理、理路、ロジック、論理
- (語義2) 意義、意味合い
- (語義3) 過程、首尾
- (語義4) 差し支え、妨げ、支障、邪魔、面倒
- (語義5) 色事、房事
- (語義7-3-1、7-4、9) はず
対義語
[編集]熟語
[編集]関連語
[編集]連語
[編集]成句
[編集]翻訳
[編集]
語義1:物事の道理や筋道 — 「道理#翻訳」を参照のこと
語義2:言葉などの意味 — 「意味#翻訳」を参照のこと
語義3:物事の理由 — 「理由#翻訳」を参照のこと
語義3-1:どうしてそうなったかの経緯 — 「経緯#翻訳」を参照のこと
語義4:困難、手間、障害
- アイルランド語: habal (ga) 男性, stró (ga) 男性
- アストゥリアス語: dificultá (ast) 女性
- アゼルバイジャン語: çətinlik (az)
- アラビア語: صُعُوبَة (ar) 女性
- イタリア語: difficoltà (it)
- 英語: difficulty (en), obstacle (en), obstruction (en), time-consuming (en)
- 中英語: resistence (enm)
- エスペラント: malfacilaĵo (eo), malfacilo (eo)
- オランダ語: hindernis (nl) 女性
- カタルーニャ語: dificultat (ca) 女性
- ガリシア語: dificultade (gl) 女性
- ギリシア語: δυσκολία (el) (dyskolía)
- クルド語:
- サンスクリット: त्यजस् (sa) 中性 (tyajas)
- シダモ語: qarra (sid)
- スウェーデン語: möda (sv) 通性
- スペイン語: dificultad (es) 女性
- チェコ語: obtíž (cs) 女性, potíž (cs) 女性
- 中国語:
- 朝鮮語: 어려움 (ko) (eoryeoum)
- デンマーク語: besvær (da) 中性
- ドイツ語: Schwierigkeit (de) 女性
- メノー派低地ドイツ語: Schwierichkjeit (pdt) 女性
- ノルウェー語:
- ハイチ語: difikilte
- ヒンディー語: बाधा (hi) (bādhā)
- フィンランド語: este (fi), hankaluus (fi)
- フランス語: difficulté (fr)
- ブルガリア語: пречка (bg) 女性 (prečka), затруднение (bg) 中性 (zatrudnenie), препятствие (bg) 中性 (prepjatstvie)
- ポルトガル語: dificuldade (pt) 女性
- マラヤーラム語: ബുദ്ധിമുട്ട് (ml) (buddhimuṭṭŭ)
- ラテン語: difficultās (la) 女性, artum (la) 中性
- ルーマニア語: dificultate (ro), piedică (ro), obstacol (ro) 中性
- ロシア語: тру́дность (ru) 女性 (trúdnostʹ), затрудне́ние (ru) 中性 (zatrudnénije)
語義5:男女の情事 — 「情事#翻訳」を参照のこと
語義6:遊里でのしきたり
語義7-2:こうなるはずだという強い推測を表す — 「はず#翻訳」を参照のこと
語義7-3-1:物事が明らかになった時、それを当然帰結すべきものであったと考え納得するさまを表す — 「はず#翻訳」を参照のこと
語義7-4:仮定したことがらをもとにすれば、こうなるはずだという強い推測を表す — 「はず#翻訳」を参照のこと
名詞:分け・別け
[編集]- 二つ以上に分けること。区分。また、分けたもの。
- (動詞連用形について)違いを判別すること。区別すること。
- 引き分け。勝負がつかないこと。
- 分配。配分。
- 残り物。残飯。
- 諸費。支払い。
- 村落の中の区分、区分け。
- (日本音楽, 略語) 歌い分け。三味線音楽などの歌唱部分を分担して独唱すること、またその部分[ja 2]。
- (古用法) 芸娼妓が得た花代を主人と折半すること。
発音
[編集]用法
[編集]類義語
[編集]対義語
[編集]関連語
[編集]熟語
[編集]翻訳
[編集]
語義1:二つ以上に分けること — 「区分#翻訳」を参照のこと
語義3:引き分け — 「ひきわけ#翻訳」を参照のこと
語義4:分配 — 「分配#翻訳」を参照のこと
語義5:残り物 — 「のこりもの#翻訳」を参照のこと
語義6:支払い — 「しはらい#翻訳」を参照のこと
固有名詞:別
[編集]わけ【別】
発音
[編集]固有名詞:和気
[編集]発音
[編集]由来
[編集]参照
[編集]動詞:分け・別け
[編集]発音
[編集]参照
[編集]動詞:湧け・沸け・涌け
[編集]発音
[編集]接頭辞
[編集]わけ【分け】
発音
[編集]参照
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]古典日本語
[編集]名詞
[編集]- 【別け・分け】
- 【訳】
類義語
[編集]熟語
[編集]連語
[編集]成句
[編集]代名詞
[編集]語源
[編集]- もと「若い衆」の意味。
固有名詞
[編集]わけ【別】
動詞:鎔け
[編集]わけ【鎔け】